第4回「Mercy Mercy Me」(1971)/Marvin Gaye | 柑橘スローライフ

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1971年。
軽音楽界にとって、とても重要なアルバムが2枚出ます。
ひとつが、白人ロック、ジョン・レノンの「Imagine」。
そしてもうひとつが、黒人ソウル、マ-ヴィン・ゲイの「What's Going On」。

今回の曲は「What's Going On」から、
とても重要なシングル曲「Mercy Mercy Me」(The Ecology)です。



冒頭、「2枚の重要なアルバム」と言いましたが、
それはこの2枚が持つ、人類に対してのメッセージの重要性です。
ジョン・レノンとマ-ヴィン・ゲイ、
この白人と黒人の二人ですが、「主張」と「人生」が非常に似通っていると、
個人的には感じています。

ジョン・レノンのアルバム「Imagine」は、
タイトル曲において、天国や地獄、あるいは国、宗教といった、
人々がごく当たり前と感じている既成概念を無くしてもいいのではないかと、
人々に対して「考えてみよう、想像してみよう」と訴えかけ、
そして、他の曲では、直截的な表現で「戦争」に反対もしています。

一方、マ-ヴィン・ゲイの「What's Going On」は、
タイトル曲では、ベトナム帰還兵の弟の話をもとに「反戦」を唱え、
そして今回とりあげた「Mercy Mercy Me」においては、
The Ecologyという副題でもわかる通り、
今から43年も前の作品に関わらず、
早くも環境問題やエコロジーの問題について言及しています。

当時のプロモーションビデオと思われる映像の中では、
それらが歌詞と連動しながら、コラージュのように展開されています。
大気汚染や海洋汚染、あるいは放射能汚染の問題、
そして、それらの人体への影響に対する危惧、
また、人口の都市集中や環境共生の問題にまで早くも言及し、
「地球はいつまで人間の虐待に耐えられるか」
といったかなり辛辣な発言をしています。

(PVと思われる映像では、幾人もの人物の顔が映し出されています。
デヴィッド・ボウイやダイアナ・ロスなどがかろうじて私にも判別できましたが、
おそらく彼の主張に賛同した、当時の各界の著名人が登場しているようです)

そして、全体としては、こうした人間の様々な所業を、
神に対して「どうかお許しください = Mercy Mercy Me」という、
キリスト教的な「救い」を求める形になっています。
(これをニーチェ的なルサンティマンと見るかは難しいところですが)

ジョン・レノンとマ-ヴィン・ゲイの、
これらの主張の内容に関しては当然賛否があるでしょうし、
狭窄的視点では、単に左翼的な発想と捉えることも可能でしょう。

しかし重要な事は、この一歳違いの二人のアーティストが、
世界的視点で見た場合の、非常に危険な当時の政治的状況(ベトナムや冷戦等)や
当時の工業社会の急激な発達(公害問題等)のフェーズという、全くの同時期に、
世界に対して、まさに機を見て敏に、こうした大きな問題提起をしているということです。

この時、二人は30歳をわずかに超えた年齢です。
今、こんなアーティストがいるか否かを考えれば、
このリスクテイクの勇気と著名人としての責任感の「凄み」は一目瞭然です。
単に収益や人気取りだけを考えれば、全くする必要の無い事である以上に、
とても大きな代償を払わざるを得ないからです。

現にジョン・レノンはその後移り住んだアメリカで、
ニクソンの執拗な警戒に脅かされ続けます。
結果的には、大きなリスクを本当にテイクしてしまったわけです。
(死亡原因にも大きな謎が残っています)

実は当時よりも現代のほうが、
より大きな社会的問題を様々に孕んでいると思われるのですが、
そうしたことに関して、著名な様々な分野のアーティスト達は、
ほとんど「思考停止状態」にあるというのが現状と言えます。

これらの作品を出す前から、この二人は著名人でしたが、
これらの作品を出すことで、彼らは真の意味での「カリスマ」となり、
そして奇しくも二人は、これらの作品発表から少し経った40歳過ぎの時点で、
あろうことか、最も自分達を守ってくれるべき人達に...
何故か「射殺」されてしまったのです。とても理不尽な最後です。

ジョンは熱狂的なファンに、そしてマ-ヴィンは父親に.....

1980年ジョン40歳、1984年マ-ヴィン44歳。
マ-ヴィンは、45歳の誕生日の1日前に、
それを祝ってくれると思った人に殺されたのです。

当時、よく覚えていますが、
朝日新聞のマ-ヴィンの死の報道は、小さな死亡欄だけでした。
とても小さな丸い切り抜きの顔写真がかろうじてあったという程度。
驚くべきことに、当時の日本でのマ-ヴィン・ゲイの扱いはそんなものだったのです。

しかし二人はそれから、図らずも「本当のレジェンド」への階段を登り始めました。
米ローリング・ストーン誌発表の「最も偉大なシンガー100人」では、
奇しくも、ジョン5位、マ-ヴィン6位と連なってランクインしています。
この二人の人生、何故かとても似通っていて、接点が多いのです。

ソウルシンガーの今や「本当のレジェンド」となったマ-ヴィン・ゲイ。
彼の数奇な人生、毅然とした主張を反芻しながら、
もう一度、是非「Mercy Mercy Me」を聞いてみて下さい。




ソウル・R&B名曲選/過去記事一覧
第1回「Until You Come Back To Me」(1974)/Aretha Franklin
第2回「Woman Needs Love」(1981)/Ray Parker Jr.
第3回「Feel Like Makin' Love」(1974)/Roberta Frack





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